加齢に伴う眼疾患

加齢とともに、神経細胞も血管や器官の細胞も劣化していきます。
目も例外ではありません。

「目が見える」という機能は、角膜(黒目)から入った光が水晶体(レンズ)で集光し、視神経の細胞が散在する網膜に投影され、視神経から脳へと伝わっていくことで成り立っています。したがってそれぞれの器官の劣化はなんらかの「見えにくい」と言う症状であらわれます。

1.老眼
加齢とともに水晶体が柔軟性を失い、ピントを合わせる調節力が低下してきます。
対策としては、老眼の程度に応じて眼鏡を装用します。

2.白内障
水晶体が硬くなるだけではなく、濁ってきます。
透明だった水晶体が濁ってくるとスリガラスを通して見るように見えにくくなります。
治療は、水晶体の混濁を除去し人工レンズを入れる手術をします。

3.緑内障
加齢とともに視神経が障害され、視野障害が起こります。
治療は、点眼薬か手術で眼圧を下げ視神経を保護します。

4.網膜の病変
網膜には、全身の他の器官と同様に、血管を通して酸素や栄養が運ばれ老廃物が運び去られます。
高血圧症・高脂血症・糖尿病などにかかっていると、動脈硬化をおこしやすく血管がもろくなったり、出血しやすくなります。網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、黄斑上膜など、加齢に伴っておこる眼底疾患は、たくさんあります。

内科疾患の治療が、もちろん必要ですが、日頃から、規則正しい生活・バランスの取れた食事・適度な運動・十分な睡眠・飲酒喫煙を控える、などが大切だと痛感します。

目の症状からわかるいろいろな病気 ②目が見えない

前回に続いて、症状からわかる病気のお話です。今回のテーマは「目が見えない」です。

1.見えにくい。目が痛い。
■原因:先天的な角膜疾患。後天的な角膜外傷や角膜疾患の後遺症など。角膜は、三叉神経の枝が分布しているので、痛覚が敏感。傷や炎症により、眼痛を生じる。
■治療方法:先天的あるいは幼少時の角膜疾患により弱視になっている場合は、視力回復は難しい。 後天的な疾患による角膜混濁に対しては、角膜 レーザー切除術・角膜移植など。
■予防方法:後天的な角膜疾患の場合は、早期治療!

2.ピントが合わず見えにくい
■原因:近視遠視乱視などの屈折異常の適切な屈折矯正がなされていない
■治療方法:眼鏡やコンタクトレンズなどで、適切な屈折矯正をおこなう。成人後なら、LASIKの適応になる場合もある。

3.「かすみ」「まぶしさ」「暗いところで見えにくい」など
■原因:白内障。先天的白内障(風疹、トキソプラズマ、染色体異常など)、若年性白内障(糖尿病やアトピーに伴う白内障、ステロイド白内障など)、加齢白内障などがある。
■治療方法:手術
■予防方法:加齢性白内障に対しては、特になし。糖尿病やアトピー、ステロイドや放射線被爆等による白内障に対しては、定期的な検診が望ましい。

4.目のかすみ、飛蚊症、眼痛、充血など。
■原因:ブドウ膜炎(眼内の炎症)。重症の場合は、失明することもあり。
→感染症(細菌、ウイルス、真菌)。全身の免疫異常(サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病)。
■治療方法:基本的には、薬による内科的治療。早期発見・早期治療が大切!

5.何となく見えにくい、黒い影が見える、など
■原因:眼底の病気(眼底の血管が詰まったり、出血したりしている)
→高血圧症、腎疾患、血液疾患(白血病など)、糖尿病などの場合 にみられる。
■症状:初期には、自覚症状が無い場合もあり!
■治療方法:まず、原因疾患の治療。血管閉塞や眼底出血の程度に応じて、薬物治療、レーザー光線による網膜光凝固、硝子体手術などをおこなう。
■予防方法:内科疾患に注意。

6.見ようとする場所が歪んで見える。あるいは見ようとする場所が見えない。  ■原因:網膜の黄斑部の異常
■治療方法:糖尿病・高血圧症などの原因疾患がある場合は、治療する。中心性網膜症や加齢黄斑変性の場合は、それらに対する眼科的治療をおこなう。
■予防方法:喫煙・過労などを避ける。糖尿病・高脂血症・動脈硬化症などの内科疾患に注意。

7.視野の一部が見えない。
■原因:緑内障による視野狭窄。脳疾患(脳血管障害、脳腫瘍など)による視野狭窄。閃輝暗点。
■治療方法:原因となっている疾患の治療。

8.ダブって見える。
■原因:
①片目で見てダブるのは、乱視など、眼球に原因があることが多い。
②両目で見てダブるのは、中枢側の問題のことが多い。糖尿病・高血圧症による微小循環障害から眼球運動神経マヒをきたすことあり。 甲状腺疾患によっても複視を生じることあり。(甲状腺眼症)
■治療方法:
①乱視などの屈折異常や眼位異常の場合は、プリズムによる矯正や斜視矯正手術など。
②原因となっている全身疾患の治療。

目の症状からわかるいろいろな病気  ①痛い

他科の医療機関のスタッフから、「目の症状から身体の病気がわかることはあるか?」と、訊かれました。
今回は、そう言う観点から書いてみました。初回のテーマは「痛み」です。

1..外傷
■症状:目が痛い
■原因:目に異物(ゴミ・鉄粉・木くずなど)が入る。物が当たる。薬品が飛入する。紫外線を浴びる。その結果、結膜や角膜に傷を生じている。
■治療方法:異物は、眼科で除去し、治療します。薬品が入った場合は、出来るだけ速やかに多量の流水で洗眼して、入った薬品を薄めます。その後、傷を治療します。
■予防方法:異物・薬品;紫外線などが目に入るおそれがある場合は、保護眼鏡などを使用する。

2.感染症
■症状:下記原因により対象の部位が痛む
■原因:目イボは、細菌による、まぶたの感染症。
流行性角結膜炎は、アデノウイルスによる感染症。
帯状ヘルペス・角膜ヘルペスなどは、ヘルペスウイルスによる感染症。
■治療方法:抗生物質・抗ヘルペス治療薬・消炎剤など、薬物治療を行ないます。
■予防方法:免疫低下・体力低下を避ける。

3.眼精疲労
■症状:パソコン作業や近見作業を長時間続けた後、目の奥が痛い。
■原因:遠視・乱視等の屈折異常や眼位異常を矯正せず、目に調節負荷をかけている。
■治療方法:屈折検査や眼位の検査を行ない、適切な眼鏡・コンタクトレンズによる矯正をする。斜視の場合は、手術が必要なこともある。
■予防方法:適度な眼鏡やコンタクトレンズを装用しましょう。

4.緑内障
■症状:閉塞隅角緑内障の急性発作の場合は、激しい頭痛・吐き気・胃痛をおこす。(24時間以内に眼圧を下げないと、失明する場合があります)
開放隅角緑内障でも、眼圧が高い場合は、眼痛を生じます。
■原因:隅角(角膜と虹彩の隙間)が狭い、あるいは隅角の「房水を排出するポンプ作用」の働きが不十分。
■治療方法:抗緑内障点眼薬、手術。
■予防方法:早期発見早期治療が重要です!!!

加齢とともに、見えにくくなる原因

最近、60代で「以前より見えにくくなった」と訴えて来院される方が増えています。原因はいくつかあるのですが、主に下記のようなものが考えられます。

1.遠視

若い頃から、遠くは良く見えており40歳過ぎから老眼鏡が必要になったが、最近遠くまで見えにくくなってきた方。 水晶体の柔軟性が失われ、ピントを合わせる調節力が低下してきています。 遠視のメガネをかけると、レンズの助けを借りてピントが合いやすくなり、遠くも良く見えて、楽になります。

2.乱視
同様に、水晶体が硬くなり調節力が低下してきているので、若い頃よりピントが合いにくくなり、見えにくいと感じるようになります。 乱視のメガネをかけると、見えやすく楽になります。

3.白内障
さらに、水晶体が混濁して、白内障となってくると、ますますピントが合いにくくなり見えにくくなります。白内障でも、視力1.0見える場合もありますが、若い頃のようなスッキリ鮮明な1.0ではないでしょう。 白内障に対する治療としては、水晶体の混濁を除去し、人工レンズを入れる手術を行ないます。

4.緑内障

眼圧が高い緑内障もあれば、正常眼圧緑内障(眼圧は正常範囲だが、視神経が弱って、視野が狭くなってくる)もあります。
視神経乳頭の陥凹の拡大、OCTで視神経繊維層の厚みが減少、視野検査で視野狭窄や暗点を認めるなどの異常があれば、点眼治療を開始した方がよいでしょう。手術が必要な場合もあります。

5.その他

黄斑変性、高血圧や糖尿病による眼底出血や血管閉塞等もよくみられる原因です。

以上、駆け足ですが「加齢に伴って見えにくい原因となるような目の病気」の主なものを挙げてみました。それぞれの眼疾患について詳しくお伝えすると長くなってしまうのでまた別の機会に…。

OCT(光干渉断層計)を導入しました

OCT は、以前は高価で大学病院の眼科くらいにしかなかったのですが、
最近は、画像も良くなり価格も安価になり、開業医でも導入出来る機種が増えてきました。

黄斑部と言うのは、網膜の中で視神経が密集していて、物を見るために最も重要な部分ですが、OCTでは、その黄斑部の断面が観察出来ます。
黄斑部の疾患(黄斑変性、黄斑円孔、黄斑前膜、中心性漿液性網脈絡膜症、糖尿病性黄斑症)の診断には、非常に役に立ちます。

極早期の緑内障の診断には、網膜神経繊維層の厚みなどを測定します。
視神経繊維層の薄い箇所が認められたら、視野検査をお勧めします。

患者さんの負担は、3割負担で600円。
検査中は、しばらく瞬きしないで見つめていなければならないので、「ちょっとつらい」とおっしゃる患者さんもおいでですが。
進行した緑内障で視野異常を自覚して来院される患者さんを診ると、早期発見につながるOCT検査の重要性を痛感します。

医療機械の進歩により、以前ならわからなかった異常が、検出出来るようになりました。
それが良いかどうかはわかりませんが、寿命が伸びている現在、生命ある限りは、視機能も良好であってほしい」と思います。

糖尿病は、目にどんな影響を与えるか?

目の奥にある網膜は、ものを見るために重要な役割をはたしています。その網膜には、視神経細胞が敷きつめられ、栄養や酸素を 補給する血管が、網のように走っています。

糖尿病にかかって高血糖状態が長く続くと、この血管がもろくなり、一部が膨らみコブをつくり(動脈瘤)出血します。(単純性網膜症)単純性網膜症から増殖性網膜症に進行すると、小さな 血管が血栓でつまったり、つまって血流が途絶えた部位に、血流を補充するために新しい血管(新生血管)が出来ます。この新生血管は、急ごしらえの ため非常に脆く、出血しやすいのです。出血すると、網膜に増殖組織(膜)が張り、網膜剥離をおこすこともあります。新生血管緑内障をおこすこともあります。

また、糖尿病があると、白内障が、早く進行します。
白内障は、手術をすれば良いのですが、血糖値が高いと手術も困難で、血糖値のコントロールが先決となります。

糖尿病性腎症が悪化すると、腎性網膜症を併発し、視力低下などの目の症状が出てきます。
そんなわけで、糖尿病にかかると、目の方にもいろいろな影響が出てくるのです。
糖尿病性網膜症は、進行すると失明に至る場合もあります。

糖尿病は、内科できちんと治療を受けることが、もちろん一番大事ですが、糖尿病性網膜症は、かなり進行するまで自覚症状が出ないことも多いので、眼科を受診して眼底検査を受けて下さい。

花粉症の季節です

花粉症の季節になると、結膜炎(目がかゆい、眼瞼が腫れぼったい)・鼻炎(鼻水が出る、鼻が詰まる)・頭がぼんやり頭痛がする、などつらい症状が出ます。
結膜炎に対しては、抗アレルギー剤の点眼薬を使います。
ステロイドを含んだ点眼薬は効きますが、感染に対する抵抗力を弱める・まれにステロイド緑内障をおこすことがあるので、注意が必要です。
鼻炎・頭痛に対しては、抗アレルギー剤の内服薬を使いますが、眠くなるなど副作用に注意。

日常生活においては、血液の循環を良くし、身体を温めると良いようで下記のような対処法をおすすめします。

・適度な運動をする
・あたたかいお茶を飲む
・お風呂に入る
・飲酒・喫煙は避ける
・油っこい食事も避ける

雪目

春スキー(やスノーボードなど)を楽しむ季節です。
晴れた日のゲレンデを滑るのは、本当に気持ち良いのですが、雪眼炎(雪目)にご注意下さい。

角膜(黒目)は、長時間直接紫外線にさらされると、表面が傷つき炎症をおこします。雪面に反射した強い紫外線にさらされてから6~10時間経つと、「結膜の充血」、「目がゴロゴロする」、「涙が出る」、「目が痛くてまぶしい」などの症状があらわれます。
1~2日のうちに、治りますが、かなり痛くてつらいです。
電気溶接や殺菌灯の紫外線でも、同様の症状がおこり、これは、電気性眼炎と呼ばれます。
強い紫外線にさらされる場所では、紫外線から目を保護するためのサングラスやゴーグルを装用しましょう。

上達めざして無我夢中で滑っていたスキーヤーが、帰って来たら、目が痛くて光が眩しく感じられるようになり、来院されたら虹彩炎をおこしていた、と言うケースがありました。
ゴーグルは装用していたのですが。

ゴーグル装用はもちろん必要ですが、疲れすぎないように、時々休憩して、楽しんで下さい。

白内障の手術を、いつ受けるか?

「白内障の手術を受けるべきでしょうか?」と言う質問を、よく受けます。

一番多いのは、運転免許の更新を前にして、視力検査で合格するだろうか、と言う時。
何とか矯正視力で0.8見えても、夜間運転するのが怖いようなら、白内障の手術を受けた方が良い、と思います。

手芸・ちぎり絵・編み物などの趣味を楽しむ方で、手もとが見えにくくてお困りの場合も、手術を受けようと決心されることが多いです。
テニスやゴルフのボールが見えにいので、手術を受けたい、と言う方も。

「車もバイクも運転しないし、特に細かい字の読書や作業もしないので、白内障の手術を受けない」と言う方もありますが。
現代社会では、目から入る情報は多く、視界がクリアになると脳も刺激を受けるのでしょう、。
白内障の手術を受けた後は、表情が明るく若々しくなられることが多いです。

寿命が延びて、長生き出来るようになりました。
個人差はありますが、体力も気力もある80歳くらいまでに、白内障の手術を受けるのが良いのでは、と思います。

ただ、白内障手術を受けても、若い頃のように「遠くも手もとも裸眼で見える」と言う状態に戻れるわけではなく、見たい距離に応じてメガネが必要にもなります。

遠視について

生まれて間もない赤ちゃんのほとんどは、遠視ですが、身体の成長とともに眼球の直径も伸びて、遠視の度数が緩くなってきます。
遠視の度数が強いと、3歳児検診や就学時検診の頃になっても、遠視のため視力が出にくい場合があります。
放置すると、弱視になったり調節のバランスを崩して内斜視になったりするので、遠視のメガネをかける必要があります。

弱視や斜視にならなくても、「学校で黒板の字が見づらい」疲れる」と訴えて来院される学童期の患者さんで屈折検査の結果、遠視だった、と言うことがよくあります。
遠視のお子さんは、遠視のメガネをかけると、眼精疲労が無くなって、楽になります。
ご両親も遠視で、遠くがよく見えて、メガネをかけずにすごしてきた、と言う場合が多いようです。

「若い頃は遠くまでよく見えていた。40歳頃から老眼用のメガネが必要になったが、加齢とともに、遠くも何だかみえにくくて疲れる」と言う大人の患者さん。
加齢とともに、水晶体の柔軟性が失われ、調節力が低下するのでしょう。
遠視のメガネをかけると、楽になる場合が多いです。近視や乱視が、「見えにくい」「目が疲れやすい」原因だと言うのはご存知の方が多いのですが、遠視も見逃せません。